『Lumines Arise』リリース最初の夜のこと【忘れたくない初回体験の記録】

ゲームレビュー

『Lumines Arise』を初めてプレイした夜に感じたことを、書き留めておきたいと思いました。初回プレイで味わった驚きや高揚が、時間とともに薄れてしまうのは悲しいですからね。

本記事はレビューでも分析でもなく、ただ「最初に触れたとき、何が心に残ったか」を記録した、ほんの個人的な初回体験の備忘録です。

私について

※上が当時買ったPSP 下が二代目。ルミネスをプレイするためだけに残してあります。

本題に入る前に、私にとってのルミネスについて少しだけ触れておきます。

初めて遊んだのは、PSP版の初代『ルミネス』でした。 パズル初心者ながら、なんとかたどり着いた最終面『Lights』に到達した時、胸の奥を何かが突き上げるような不思議な体験をしたのを今でも覚えています。ここから本シリーズの虜になりました。

それ以来、ルミネスの新作は必ず手に取り、プロデューサー水口氏の哲学にも影響を受け、Enhanceが手掛けた作品も欠かさず遊ぶようになりました。 ルミネスは、私にとって“物語ではなく体験そのもので泣けるパズルゲーム”として、ずっと特別な存在です。

待ちに待ったアライズ

そんなわけで、本作にはとても大きな期待を寄せていました。先行リリースの楽曲や東京ゲームショウ2025での体験版の時点で、とんでもない作品になる気配が漂っていましたから、「今回はどんな体験を届けてくれるのか」を心底楽しみにしていました。

アライズのテーマカラー(紫)に対する印象

※『LUMINES REMASTERED』より

私にとってルミネスといえば、ずっと「オレンジ」のイメージです。初代のビビッドな橙色、光が弾けるような明るさ、画面を開いた瞬間に気分が一段階上がる、あの高揚の色。それこそが“ルミネスカラー”として長く心に刻まれてきました。

一方で本作『Lumines Arise』のテーマカラーは「紫」。発表当初は正直意外でした。その意図が知りたくなるほど。

実際にゲームを起動すると、タイトル画面は上記のような感じです。深い紫のグラデーションが画面いっぱいに広がり、粒子がゆっくり形をつくり、ほどけていきます。その中心から、成人男性がこちらへ歩み寄るように姿を現す──初代の“眩しい開幕”とは真逆の、とても静かで内向的な始まり方でした。

この紫を見たとき、個人的には夜のライブで焚かれたスモークがライトに照らされているような印象を受けました。音楽が始まる“ほんの直前”、観客席に張りつめる静けさと、底のほうでじんわり膨らんでいく高揚感。じっと息をひそめながら、曲の始まりを待つあの感覚に近い色です。

新生ルミネスの幕が、静かに開こうとしている。印象的で、高揚感を煽る良いカラーだと思います。

今作のJourney Mode

GAME Watch のインタビューで、プロデューサーの水口哲也氏とディレクターの石原孝士が以下のように語っています。

「Tetris Effect」が内面的な癒しの旅だったとすれば、「Lumines Arise」は外側に向かって爆発する高揚感だ。(引用 : GAME Watch「Lumines Arise」インタビュー。目指したのはパズルゲームを超えた感動体験)

この「外側に向かって爆発する高揚感」という言葉は、作品の方向性を理解するうえで重要なヒントになると感じました。
たしかに、Enhanceが以前手掛けた『Tetris Effect』のJourney Modeが“深く内側へ潜っていく瞑想的な旅”だったのに対して、『Lumines Arise』は“人や世界と一緒に前へ進むような高揚感”を感じさせます。(その理由については後述します)

『Tetris Effect』が生まれた2018年と、『Lumines Arise』が登場した2025年の現在では、世界の空気も大きく変わりました。私たちはコロナ禍で「触れられない時間」を経験したし、最近は社会の分断や戦争が日々ニュースとして目につきます。そんな環境のなかで、多くの人が「世界とどうつながるか」を改めて意識するようになった気がするんです。

そうした時代に“外へ向かう高揚感”というテーマを掲げることは、少し大げさに言えばひとつの姿勢表明のようにも感じられます。実際に本作は、世界の混乱の中で、「それでも前に進む」という小さな、しかし力強い意志を、抽象的表現を通して提示しているように思えます。(もちろん制作者がどこまで意図しているかは別として、私はそう受け取りました。)

そして、そのようなメッセージを明確に体現しているのが、Journey Mode 冒頭のステージ『Only Human』です。

『Only Human』から感じたこと

シングルトラックとして先行リリースされた『Only Human』は、本作のJourneyモードの最初のステージの曲でもあり、ラストを締めくくる曲でもあります。作品全体を象徴する位置づけの楽曲なのは間違いありません。

ディレクターの石原氏は、メディアにて「楽曲の歌詞にも注目してほしい」と語っていました。そのことからも、何かしらの意図がそこに隠れていることは想像できました。

先行リリース時点からこの曲は聞き込んでいますし、私個人的にもかなり好きな曲です。歌詞に注目してみると、「肌と肌が触れ合う」「身体」「鼓動」といった、身体そのものに関わる言葉が多いことに気づきました。(参照 : Only Human(feat. Krysta Youngs)歌詞

人間は本来、触れること・呼吸すること・鼓動を感じることといった“生の感覚”に支えられて生きている存在です。 近年のデジタルな環境に身を置いていると忘れがちになりますね。『Only Human』は、そうした忘れかけていた身体性を思い出させてくれる歌だなと感じます。

さらに歌詞を追っていくと、 「ヒーローは誰も救ってくれない」 「一日一日、アップダウンを抱えながら生き延びていく」 といったフレーズが並びます。ここからは、弱さを抱えたまま、それでも前へ進もうとする“人間の姿そのもの”を描いた、とても誠実な視線を感じます。

これは、誰かに救われる物語を歌った曲ではありません。弱さを抱えた人間が、それでも今日を生き延びるために歩いていく、その当たり前で、だからこそ愛おしい姿を描いている歌だと思いました。 華やかな成功も、劇的な救済もない。ただ、擦り傷だらけのまま前へ進む普通の人間の歩みを、誠実なまなざしで歌っているわけです。

そのうえで、歌詞の中で出てくる「 journey(旅)」 という言葉。 実際に本作には「 journey モード」というモードがありますが、これは比喩であると同時に、「人生という旅は、“弱さを抱えながら続ける歩み”である」といった製作者側のメッセージだと私は捉えました。

とにかくファーストステージが圧巻

と、ここまでいろいろ理屈っぽく書いてきましたが──ファーストステージの体験は、そんな分析を軽く吹き飛ばすほど圧倒的でした。

手を伸ばせばボーカルに触れられそうな距離感。 ステージの熱気の中で、観客と肩を揺らしながら同じリズムに乗っているような身体感覚。 画面越しなのに、まるでライブ会場のフロント列に立っているかのような臨場感が全身を包み込みます。

そして、この“ライブ感”をさらに決定的にしているのが、バースト時に登場する他の Loomii たちです。 あれはただの背景ではなく、“同じ時間を生で共有している観客”として機能しているように感じました。 自分ひとりで音楽に没入しているのではなく、同じステージを、同じ瞬間に、別の存在がちゃんと隣り合わせで体験している。その気配があるだけで、音楽ライブ特有の「共鳴」が一段階深まるんですよね。

Loomii が画面いっぱいに散る瞬間、私はふと昔の記憶を思い出しました。サマーソニックで Radiohead の “Creep” を聴いたときのことです。見知らぬ外国人と肩を組んで、熱唱しながら揺れていたあの時間。名前も知らない誰かと、手を取り合って“いまここ”の熱を共有する感覚。あの喜びと高揚に限りなく近い感覚を、私は『Only Human』のステージで感じた気がします。

テトリスエフェクトにも高い没入感がありましたが、こちらは孤独でした。自分の内面と向き合っているような感じです。一方で『Lumines Arise』は、孤独な内面世界に沈むのではなく、光と音楽に引かれて自然と体が揺れてしまうような、一体感のある高揚へと導いてくれる。それこそ「外側に向かって爆発する高揚感」を感じさせてくれます。

そして、ステージが進むごとに、また別の種類の驚きが波のように押し寄せてきました。ここからは、その中でも特に深く心をつかまれたスキンについて書いていきます。

印象的だったスキン(曲)の話

①静けさの底でゆっくり芽吹く光 /『The Dark』

『The Dark』は、今回のJourney Modeの中でも、強く印象に残ったスキンでした。ステージが始まると、画面の大半を占めるのは、ほとんど“無”に等しい暗闇です。その中で小さな光の粒が不規則に揺れ、漂っています。何かを探し当てようとしているのか、あるいは深層意識の底をそっと探るような、静かで不穏な雰囲気です。

盤面のブロックは、煤をまとった鉱石のようなざらついた質感で、落ちるたびに金属音のような“カチッ”という音が鳴ります。中盤で差し込まれる女性ボーカルは、暗闇の奥からそっと差し伸べられる救いの手のようで、ぬくもりを帯びた心地よさがありました。

そして極めつけはサビの瞬間。中央のサークルから爆ぜるように光が解き放たれ、金色の鳥たちが四方へ飛び立ちます。画面全体がふっと“白昼夢のような輝き”に変わり、全身に鳥肌が立つほどのカタルシスが訪れました。

終盤では、両手がそっと中央を覆い、光を包み込むようにして幕が閉じていきます。内側からあふれ出る光があまりに眩しすぎたのでしょうか。そんな仕草にも見えて、今回のジャーニーを象徴する締めくくりでした。“The Dark”というタイトルについて、もう一度考えさせられる印象的な終わり方です。

②沈む光と、立ち止まる私  『Sunset Beach』

こちらもJourney Modeの中でひときわ情緒的で心に響いたステージでした。

砂浜にひとり腰を下ろした女性は、こちらに背を向けたまま、静かに水平線を見つめています。ブロックを消すたび、画面の左から右へと風が通り抜け、砂がふわりと揺れ、髪がなびきます。映像上のエフェクトなのに、なぜか肌に触れる風を感じたような“質感”がある、不思議な演出です。

上空の雲は、ブロックを消すと一気に流れ出します。固定された視点のまま、時間だけが一気に前へ進んでいく──そんな印象を受けました。世界は動いているのに、自分だけが取り残されているような感覚がふと胸の奥に刺さります。

そして後半、太陽が沈みはじめ、画面は夕方の柔らかな色に染まっていきます。何か具体的なドラマが語られるわけではないのに、沈んでいく光にはどうしても“終わり”の気配が漂う。ひとつの体験が静かに区切られてしまうような、胸の奥がじんとする寂しさがあり、思わず涙腺がゆるみました。

要素だけを抜き出せば、とてもシンプルなステージです。けれど私に強く残ったのは、「動いていく世界」と「動かない自分」という対比でした。雲が流れるスピードは時間の流れそのもの。時間は確実に前へ進んでいく。けれどプレイヤーの視点だけは微動だにしない。

Ariseが掲げる「前へ向かう力」とはまた別の、“立ち止まることそのものの意味”を考えさせるステージだと思いました。生きていれば、誰にでも訪れる内省の時間。その静けさを丁寧にすくい上げたようなスキンです。

単体としても美しいですが、ジャーニー全体の流れの中で体験すると、胸に落ちる重さがさらに深まります。

③背中を細い針でなぞられるような恐怖 / 『SPIDER WEBS』

『SPIDER WEBS』は、はじめて聞いた時から、他のスキンとは全く違う印象を受けました。例えるなら、部屋の照明が急に落ちて、視界の端で“得体のしれない何か”がゆっくり動くような、恐怖感といいましょうか。

背中を細い針でなぞられるような、妙なゾワゾワ感があるんですよね。鳥肌の立ち方がいつもと違っていて、多分生理的な怖さからくるものだと思います。

加えて、蜘蛛特有の「急に動いて、急に止まる」あの不規則な動作。あれがそのままビートの揺れ方に落とし込まれていて、面白いです。リズムにも妙な中毒性があって、怖いのに“もっと聴きたい”という矛盾した感情に。不快と快感の境界を行き来する、不思議な一曲です。

そして画面にうごめく蜘蛛の演出。視界に映り込むだけで反射的に身体がこわばる瞬間があって、「こんなにゲームで本能を刺激されることある?」と思ってしまいました。
……とはいえ、蜘蛛が苦手な人にとっては地獄なので、アクセシビリティ設定でちゃんと“蜘蛛を消せる”ようにしてあるのは本当に救い。あれは全ユーザーを想定した見事な配慮だと思います。

④エキゾチックな高揚感 /『Chameleon Groove』

もうひとつ触れておきたいのが、この『Chameleon Groove』というスキンです。先行リリース版を聴いたときから、ずっと耳に刺さり続けている曲でした。異国語のボーカルと跳ねるようなビート。どこか中毒性のあるコーラス。とにかくエキゾチックで、刺激的で、こちらの身体を勝手に揺らしてくる曲です。

画面の左右で元気いっぱいに踊っているカメレオンたちも強烈です。初代ルミネスの“動物スキン”を彷彿とさせるあの素っ頓狂なテンション。ちょっとバカバカしくて、妙に愛らしくて、シリーズを追ってきた人間には懐かしさすら芽生える演出です。

そして、この高揚感には個人的な記憶も重なりました。 昔、Underworldのライブで『Born Slippy』を聴いたとき、心臓の底を下から突き上げるような衝動と、観客が一気にひとつの塊になるような一体感がありました。『Chameleon Groove』には、それと同じ種類の“高揚”があったことは確かです。気づけば、両脇のカメレオンたちと一緒に、思わず拳を上に振り上げてしまうほど。

テトリスエフェクトの『Flames』も異国ボーカルと高い躍動感を持った曲でしたが、『Chameleon Groove』にはさらにHydelicらしい“身体を前へ動かしたくなる推進力”があります。音・映像・操作すべてが一体となって、プレイヤーのテンションを数段引き上げてくる。まさに「Arise(立ち上がれ)」という言葉の体現のような曲でした。

最後に

以上、初めてアライズを遊んだ夜の、まだ形になりきらない思いを並べてみました。今後も追加要素があれば、本記事に記載していきます。
いつか思い出が薄れたとしても、この記事を読み返せば、そのときの感動をまた思い出せる気がします。


もし、この文章がどこかの誰かの体験と少しでも重なるところがあれば、それだけで十分です。
そして、こんな“旅の始まり”を創り出してくれた開発者の方々へ、心からの敬意と感謝をそっと置いておきたいと思います。

コメント

タイトルとURLをコピーしました