シューティングゲーム(以下、STG)というジャンルは、もはや“絶滅危惧”的存在だ。新作は少なく、話題にもなりづらい。変わり映えのしないメカニクス、枯渇したアイデア、狭まる市場規模。そうした言説を前にすると、私自身も「確かに」と頷いてしまう。しかし、それでもなお「やっぱりSTGは面白いじゃないか」と思わせてくれる作品があった。
それが『BLUE REVOLVER』である。
“弾幕”ではなく“Manic”――スピードと熱量のSTG

本作はStellar Circleによる縦スクロールSTGだ。計6人の小規模チームで開発され、本作が商業作品としては初作品になるという。
開発者は本作を「弾幕(Bullet Hell)」と位置づけておらず、代わりに「Manic shooter」と表現している。確かにプレイしてみると、その意味がよくわかる。敵弾の数は近年の弾幕系ほどではないが、弾速は非常に速く、自機もそれに負けじと俊敏に動く。敵機の耐久力は高く、ひとつひとつの処理に時間がかかる。つまり「とにかく忙しい」=「 Manic(大忙しの) shooter」なのだ。
キャラクターと武装の選択が生む多層的な攻略性

操作はオーソドックスな4ボタン方式。通常ショット、ラピッドショット、ボム、スペシャルウェポン。ショット押しっぱなしで移動速度が下がるあたりも含めて、ケイブ作品を彷彿とさせる。
プレイヤーキャラは、赤髪の天才ハッカー「Mae」と、組織Blue Revolverのエージェント「Val」、「Dee」の3人から選択可能だ。どちらを選んでも基本操作に違いはないが、4種類あるスペシャルウェポンがキャラごとに異なっている。
たとえば、どちらの機体も使える「Hyper Laser」と「Cluster Missile」は共通の武装だが、発生の速さや攻撃範囲に微妙な違いがある。さらに「Plasma Lancer」や「Stasis Field」など、キャラクター専用の武装は性能も使用感もまったく異なる。
このスペシャルウェポンがとにかく強力で、道中やボス戦を切り抜けるには積極的に使っていく必要がある。敵機の硬さも相まって、パターン構築における主役ともいえる存在といえよう。武装とステージ構成の噛み合わせを試行錯誤する楽しみが、本作のリプレイ性を支えているように感じた。
稼ぎと爽快感を両立するスコアシステム
STGといえば、スコア稼ぎも楽しみのひとつ。本作では、通常ショットで敵を倒すことで倍率が上昇し、最大8倍に達する。この状態でスペシャルウェポンを使って敵を撃破すれば、64倍のスコアが手に入る仕組みだ。
連続ヒットからの高倍率処理による「スコアの爆発」は、音と視覚のフィードバックとあいまって非常に気持ちがいい。加えてスコアに応じたエクステンド(残機増加)や、特定のスコア条件を達成することで解禁されるギャラリーやBGMなどの報酬も用意されており、やり込む動機づけとしてもしっかり機能している印象だ。
難易度設計の妙――“Normal”は丁寧、“Hyper”は地獄

難易度は「Normal」「Hyper」「Parallel」の3段階用意されている。デフォルトはHyperに設定されているが、これは罠だ。STG経験者でも、まずはNormalから始めることを強くおすすめしたい。
Normalは丁寧なチューニングが施されており、弾幕パターンや敵編隊を何度か見ればクリア可能な設計となっている。スペシャルウェポンやボムの活用を学ぶにはちょうどよい難易度だろう。一方、Hyper以上はまさに人外向けだ。画面密度と反応速度の要求が一気に跳ね上がる。だが、その分乗り越えたときの達成感は大きい。
ちなみに筆者はSTGジャンル自体をそこまで遊んでこなかった。そんな私もNormalを5回程度のプレイでワンコインクリアできた。Hyperに関しては3面ボスが現状限界。とはいえレベルデザインが洗練されており、弾幕パターンを覚えれば突破可能に思える。
デザインと音楽の統一美――STGという“世界”を構築する

『BLUE REVOLVER』の魅力は、ゲームプレイだけにとどまらない。むしろこの作品を唯一無二にしているのは、その“世界の作り込み”にあると筆者は考える。
イラストレーターwoof氏によるカラフルでビビッドなキャラクターデザインは、STGとしては異色ながら、圧倒的な存在感を放っている印象だ。近未来的なガジェット感とアニメ的なファッション性を兼ね備え、シューティングゲームにおける“キャラの魅力”をここまで引き上げた例はそう多くないのではないか。(woof氏の他イラストについては、彼のXにて閲覧可能)

音楽も秀逸だ。Qygen氏によるハードコアテクノ調のサウンドトラックは、ゲームのスピード感と絶妙にマッチし、プレイ中の没入感を加速させる。リズムとアクションがシンクロするような快感は、音ゲーのそれにも近い。(本作のサントラは、普段STGをプレイしない人にも一見の価値ありだ)
STGは「撃って避ける」だけのゲームではない。そこに鳴り響く音、色彩、UI、世界観が渾然一体となってはじめて、作品としての輪郭を持ち始める。本作は、その点でも非常に高い完成度を誇っている。
いま、STGを再発見するならこの一本

『BLUE REVOLVER』は、縦スクロールSTGを現代的なセンスで再定義しようとした意欲作だ。ハイテンポな戦闘、リスキーなスコアシステム、キャラクターごとの戦略性、そしてビジュアルと音の統一感。これらすべてが高い水準で組み上げられており、「STGはもう古い」と切り捨てるにはあまりにも惜しい輝きを放っている。
もしあなたがSTGを久しく遊んでいないなら、あるいは一度は離れてしまったなら――ぜひこの作品に触れてみてほしい。古びたジャンルと思われがちなSTGに、まだこんなにも新鮮で、情熱的な作品があるのだと知ってもらいたい。
Steamにて配信中。価格は1,480円。派手なセールのタイミングを待たずとも、その価値は十分にある。



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